美と空間の系譜・西洋建築の歴史
様式の二つの流れ
二つの世界:ニース附近~フランスとイタリアの国境に沿って北上し、スイスを東西に横断してオーストリアのウィン盆地にいたる、全長ほぼ1000kmに及ぶ山脈をアルプス山脈と言っている。標高4000m級の高峰を連ねるこの急峻な山脈は、歴史的・文化的にヨーロッパを二つの世界に分けてきたのである。地中海世界とアルプスの北側の世界である。今日のヨーロッパ文化は、この二つの世界がそれぞれ独自に生み出した二つの文化に、源を発すると言われる。河の流れに例えれば、古代地中海世界に発し成熟した<古典文化>の流れは、ギリシア、ローマ帝国滅亡後、アルプス以北の世界で生まれ成長しつつあった<中世キリスト教文化>の力強い流れに河床を譲る。しかし、古典の水脈は枯れることなく、ところどころで湧き水をつくりながら伏流となって中世を生き延び、ルネサンスのイタリアにおいて再び奔流となって地表に噴出し、キリスト教文化の流れに覆いかぶさる。
合流した二つの流れは、ときに表層流となり、時に底流となりながらも、しだいに混じり合って今日まで下がってきたのである。
ここをクリックして全文をpdfで読む。(美と空間・系譜西洋建築の歴史)
